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「アドルノ美学研究会」は2008年に東京芸術大学美学研究室の有志によって発足しました。

私たちは謎かけのようなアドルノの文章の一語一句に立ち止まり、互いに意見を交わしあいながら『美学理論』を翻訳しています。
晦渋ともいえるアドルノの文章に頭を痛めながら、それでも時折訪れる、すべてが符合し、アドルノの思考が一瞬の光芒のうちに、それこそ判じ絵のようにひらめく瞬間との出会いに魅惑されつつ、さながら迷宮のようなアドルノの美学のなかへ、ゆっくりと分け入っています。この探索の先にアドルノの美学が、そして、モダニズム芸術の見取り図が星座として私たちの前に出現することを待望しつつ。

本研究会を構成するメンバーの専門は、アドルノ美学に限定されるものではなく、複数の領域に渡っています。しかし、様々な方向に自由に伸びていくそれぞれの関心が交差するひとつの地点が「モダニズム芸術」でした。もともと芸大美学研究室内では「モダニズム研究会」が運営されており、モダニズムに対して様々な角度からアプローチが試みられていたのですが、私たちはモダニズムの本質をあらためて考察したいと考え、アドルノの美学理論を翻訳する新たな研究会を立ち上げました。

アドルノが逝去したのは1969年であり、『美の理論』として広く知られるようになったアドルノの遺稿が出版されてからすでに40年の年月が過ぎ去ろうとしています。ポスト・ポストモダンすら語られるようになった今、なぜアドルノなのか?なぜモダニズムなのか?

今日、ポストモダンの脱―物語の行き詰まりと閉塞、再―魔術化の傾向が至るところに感じられます。そうした現状に際し、その起点であり、脱―魔術化を目指したモダニズムの意味とポテンシャルについて再考することは焦眉の課題であるといえるでしょう。実際、近年モダニズムに対する問い直しの気運は高まりつつあります。
モダニズムのほとんど唯一の「美学」であるアドルノの著作を見直すことは、そうした問題意識につながっています。
アドルノの『美学理論』は、いわば、多様なモダニズムの事象と問題を集めて、それを解析し、光を放射するプリズムです。そもそもモダニズム以降、芸術は可能なのか、美学は可能なのかという問いかけから始まるそれは、モダニズムについての問いを開いたかたちで新たに投げかけてきます。

アドルノの複雑な思考の過程を解きほぐし、すくい上げようと試みる私たちの作業を、モダニズムとモダニズム芸術の解明のために役立てられるならば、これに勝る喜びはありません。
訳出にあたっては、先行の日本語訳書および英語訳書を参照しつつ、正確に訳すようメンバー一同尽力しているつもりですが、不行き届きな点も多々あるかと思います。ご意見やご批判、ご感想などがあれば、ぜひお寄せください。
(石田)
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本研究会は、2015年10月現在休止中です。

ただし、『美学理論』を含めたアドルノ美学の勉強会は、以下で引き続き行われています。こちらもご参照ください。(松永)